リンは、猫にとって必要な栄養素の一つであり、骨や歯の形成・維持に必要不可欠なミネラルの一つです。また、リンは、ATPやDNAなどの合成にも必要な栄養素の一つです。
ただし、リンの過剰摂取は、健康被害を引き起こす可能性があります。
例えば、リン過剰症は、腎臓機能の低下、骨の疾患、心臓病などを引き起こすことがあります。猫の場合、リン過剰症は、高リンの食事を与え続けた場合や、腎臓病などで腎臓が正常に機能しなくなった場合に発生することがあります。
この記事ではそんなリンについて簡単に解説しています。
ぜひ最後まで読んでもらって、幸せな猫くらしをできるようにしていきましょう。
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リン-Phosphorus
リンとは?
リンとは、カルシウムと近い働きをするミネラルになり、カルシウムと同様に、骨や歯に存在しています。その割合は86%です。
筋肉の収縮に8.5%、残りの5.5%が脳、神経、肝臓、血中などに存在し、浸透圧やphの調整、または核酸やATPとして、細胞構成成分として存在しています。
リンは、猫にとって必要不可欠なミネラルの一つであり、骨や歯の形成、エネルギー代謝、細胞膜の構成、DNA合成など、多くの生理的プロセスに関与しています。猫は、成長期や妊娠中、授乳中に特にリンを必要とします。また、老化による骨粗鬆症の予防や治療にもリンが必要とされます。
猫の食事には、リンが十分に含まれている場合が多いため、リン欠乏症はまれです。一方、リン過剰症も、猫にとって問題となり得ます。過剰なリンの摂取は、腎臓の機能障害や骨代謝異常を引き起こすことがあります。猫が高リンの食品を摂取することは、病気や老化による腎臓機能の低下を加速させる可能性があるため、注意が必要です。
猫にとって適切なリンの摂取量を確保するためには、食事内容の管理が重要です。獣医師が推奨する猫用のキャットフードには、適切な量のリンが含まれているため、通常はリン欠乏症になることはまれです。ただし、腎臓の機能障害を抱える猫や、老化によりリン代謝が低下した猫には、獣医師が指示する通り、リンの制限をする必要がある場合があります。
猫が健康的な生活を送るためには、リンの適切な摂取量を確保することが重要です。リンの過剰摂取による健康問題を回避するためには、獣医師の指導に従って食事内容を調整することが必要です。
リンは様々な場所で役立っている
リンは様々な場所で形を変えて、次のような用途で活用されています。
- 骨や歯を構成している
- 細胞膜を構成している
- 核酸を構成している
- ATPを形成
- 細胞の浸透圧の調整
- 神経伝達物質の材料
- エネルギーの受け渡し
このように、実にいろいろな場所で使われています。
カルシウムやアデノシンといった物質と結合して、姿を変えて活用されています。
カルシウムと結合すると、リン酸カルシウムとして骨や歯の構成成分になります。
アデノシンとリン3つが結合するとATP(アデノシン3リン酸)となり、分解するときにエネルギー源となります。
このようにリンは、カルシウムなどほかの物質と結合して働きます。
その中で重要となるのが、摂取バランスになります。
リンの摂取量と理想的な摂取バランス
リンとカルシウムは摂取バランスが大切
リンの摂取バランスはカルシウムより多くならないことが推奨されています。
Ca/p≧1.0
ペット栄養学会でもそのように言われています
参考:ペット栄養学会誌, 24(1), 2021 (jst.go.jp)
その中でも様々な情報がある中で、リンとカルシウムの摂取バランスは、
「 1 : 1 ~ 1 : 1.5 」程度
と、一般的には言われています。
要はリンよりカルシウムの量が同じかやや多めぐらいがいいということです。
リンが過剰のときの体への影響
リンが過剰の場合は、
- 骨がもろくなる
- 腎不全が悪化する
- 高リン血症になる
- 上皮小体亢進症になる
このような影響があります。
リンがカルシウムより過剰となると、骨からカルシウムを取り出して、カルシウムを血中へと取り込んでしまいます。
すると、骨のカルシウムが不足となり、骨がもろくなってしまいます。
カルシウムとリンはバランスよく摂取する必要があります。
リンはカルシウムだけではなくマグネシウムとのバランスも大切
リンはマグネシウムとのバランスも大切と言われています。
その理由は、最適なバランスで摂取すると尿路結石の予防となるとされているからです。
カルシウム、リン、マグネシウムの成猫の理想的なバランスは、
「 1.2 : 1.0 : 0.08 」程度
とされています。
成長期の猫は、
「 1 : 0.8 : 0.08 」程度
とされています。
リンの最低摂取量の基準
リンの必要最低摂取量はAAFCOにて決められています。
AAFCOによるリンの基準は、
成長期の猫で、0.8%以上
成猫で、0.5%以上
と定められています。