猫は肉食動物であり、肉から得られるタンパク質を主な栄養源としています。猫の体内で合成できない11種類のアミノ酸が存在するため、これらのアミノ酸を食事から摂取する必要があります。これらのアミノ酸は、必須アミノ酸と呼ばれています。
商業的に製造されたキャットフードには、猫に必要な栄養素がバランス良く含まれているため、通常、必須アミノ酸も十分に含まれています。ただし、自家製の食事を与える場合は、必須アミノ酸が適切に含まれているかを確認することが重要です。
この記事ではそんな11種類の必須アミノ酸について簡単に解説しています。
ぜひ最後まで読んでもらって、幸せな猫くらしをできるようにしていきましょう。
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猫にとってタンパク質は超重要
猫にとってタンパク質は重要な成分になります。
なぜ重要かというと、猫は炭水化物をうまく消化できないからです。
人は炭水化物(パン、ごはん、麺など)から糖質などを消化吸収することが出来ます。
しかし、猫は野生にてその必要性が無かったため、炭水化物を消化する酵素「アミラーゼ」が少なくなっています。
唾液や膵臓の中のアミラーゼの量が極端に少ないため、炭水化物の主成分である糖質(でんぷん)を消化することがとても苦手です。
そのため、タンパク質や脂肪が必要なエネルギー源になっているため超重要と言えます。
タンパク質とはアミノ酸で出来ている
タンパク質はアミノ酸によって構成されていて、体内にて、約20種類のアミノ酸に分解されます。
その中でも、体内で作ることの出来ないアミノ酸を、食物などから取る必要が必須であることから、必須アミノ酸と呼ばれています。
それでは、その必須アミノ酸について解説していきます。
必須アミノ酸
猫の場合は、アルギニン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン(リシン)、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン(スレオニン)、トリプトファン、バリンと、タウリンの11種類です。
アルギニン
アミノ酸の分解過程で発生するアンモニアの無毒化
アルギニンは、アミノ酸の分解過程で発生するアンモニアを無毒化するのに重要な働きを持つ。アルギニン不足でアンモニアの無毒化が進まなかった場合は、血中のアンモニア濃度が高くなり、高アンモニア血症を引き起こす。
アルギニンの代謝過程で生成される一酸化窒素による血管拡張作用
アルギニンの代謝過程で生成される一酸化窒素は、血管の中膜にある平滑筋に作用して、平滑筋の緊張が和らぎ、血管をしなやかに保つ働きをする。
コラーゲンの合成促進、免疫力の向上
アルギニンには、コラーゲンの合成促進や、免疫力を向上する働きがあり、傷などの治癒の速度を高めたりする効果があるとされている。
アルギニンを含む食材
鶏肉、豚肉、牛肉などの肉類、エビ、カニなどの魚介類、大豆、ナッツ、牛乳などに含まれている。
ヒスチジン
ヒスタミンに変換される
ヒスタミンはヒスチジンより合成されます。
ヒスタミンは血中濃度が高くなると、かゆみやアレルギーの原因になるとされている。
脂肪分解促進作用がある
脂肪内での脂肪分解作用があるとされている。
人への作用では、運動前に摂取すると、体脂肪が燃えやすくなる作用がある。
ヒスチジンを含む食材
特にカツオが多く、マグロ、ぶり、はまちなどの魚介類などに含まれる。
イソロイシン
筋肉の増加、維持に効果がある
イソロイシン・ロイシン・バリンの3つは、BCAA(分岐鎖アミノ酸)と呼ばれている。
BCAAは人用のプロテインなどに含まれていて、筋肉を構成するアミノ酸の主成分である。
筋肉強化や、疲労回復などに効果があるとされている。
高齢の猫は積極的に摂取することが推奨されている
年を取ると、BCAAに対する体の反応が衰えるとされており、不足しがちになる。
不足すると、筋肉量の減衰、肉球の乾燥、ひび割れなどにつながるため、積極的に摂取することが推奨されている。
イソロイシンを含む食材
カツオ節、大豆、チーズなど様々な食物に含まれている。
ロイシン
筋肉を強化、維持の効果がある
イソロイシン・ロイシン・バリンの3つは、BCAA(分岐鎖アミノ酸)と呼ばれている。
BCAAの中でもこのロイシンが、筋肉の強化する効果がより高くなっている。
インスリンの分泌を促す
ロイシンは膵臓に働きかけ、インスリンの分泌を促す作用があるとされている。
インスリンは肝臓、骨格筋などにエネルギーとなる糖の取り込みを促す作用があり、全身の活力を上げる効果がある。
インスリンが不足すると、血中での取り込まれなかった糖の濃度が高くなってしまう。
ロイシンを含む食材
カツオ節、牛レバー、鶏肉、大豆など。
リジン(リシン)
疲労回復効果、肝機能向上など様々な効果が期待できる
リジン(リシン)はタンパク質の吸収を促進させ、体の健康を保つ力を向上させます。
疲労回復や、弱った肝臓の機能を回復したりします。
第一制限アミノ酸になりやすい
リジン(リシン)は穀類などにはあまり多く含まれていないため、食物含有量が不足しがち。
そのため第一制限アミノ酸になりやすい。
※第一制限アミノ酸とは、その食物のアミノ酸の中で、一番少ないアミノ酸のこと
リシンを含む食材
魚、肉類に多く、大豆製品にも含まれている。
メチオニン
硫黄を含むアミノ酸
メチオニンは、硫黄原子を含んだアミノ酸(含硫アミノ酸)で、含硫アミノ酸はメチオニンのほかに、タウリンやシステインなどもある。
肝臓の働きをサポート
肝臓にて、脂肪の燃焼に活躍するカルニチンの生成をサポートしている。
システインの合成にも使われている
メチオニンは、肌トラブルの解決に活躍するシステインの合成にも使われています。
自作フードを与えている人は要注意
食物含有量が少ないため第一制限アミノ酸となることが多いアミノ酸である。
したがって、手作りフードなどを与えている場合は不足しないように注意が必要である。
※第一制限アミノ酸とは、その食物のアミノ酸の中で、一番少ないアミノ酸のこと
メチオニンを含む食材
肉類、魚、乳製品などに含まれている。
フェニルアラニン
脳内で神経伝達物質のもとになる
フェニルアラニンは肝臓でチロシンに変換されます。
チロシンはドーパミンなどのもとになるアミノ酸です。
不足すると毛ヅヤなどに影響が出る
不足すると毛ヅヤなど、毛の状態に影響を与えるため、他のアミノ酸と同様にバランスよく摂取する必要がある。
フェニルアラニンを含む食材
鶏肉、牛肉、豚肉などの肉類、魚や大豆などに含まれている。
トレオニン(スレオニン)
酵素の活性部位(活性中心)を形成するときに機能する
酵素の活性部位(活性中心)を形成するときに、トレオニンは大切な役割を果たします。
※酵素の活性部位とは、基質と結びついた化学反応が進む酵素の部位のこと
トレオニン(スレオニン)を含む食材
鶏肉、マグロ、大豆などに含まれている。
トリプトファン
三大神経伝達物質の一つ、幸せホルモン「セロトニン」のもと
ドーパミン、ノルアドレナリンと共に三大神経伝達物質の一つ。
感情面や精神面に作用するとても大切な物質。
夜になるとセロトニンはメラトニンへと作り変えられる
日中に作られたセロトニンは夜になると回収され、睡眠を促すメラトニンへと作り変えられる。
猫に対してはストレスケアとしても活用されている
トリプトファンは猫のストレスによって起こる行動を、減少させるという成果が報告されています。
抗不安薬「カソゼピン」を作るために用いられる
抗不安薬であるカゼソピンは、αカソゼピンを主原料にして出来ている。
αカソゼピンは、ミルクに含まれているタンパク質「カゼイン」を、トリプトファンが分解してできる物質である。
トリプトファンを含む食材
肉、魚、乳製品、バナナなどに含まれている。
バリン
筋肉の合成を促進し、分解を抑制する
イソロイシン・ロイシン・バリンの3つは、BCAA(分岐鎖アミノ酸)と呼ばれている。
バリンを含むBCAAには、筋肉を修復する作用もあるため、筋肉強化、衰退予防、修復促進効果が期待できる。
バリンを含む食物
チーズ、魚、鶏肉、牛肉などに含まれている。
タウリン
厳密にはアミノ酸ではない
厳密にはアミノ酸ではないが、重要な成分として必須アミノ酸として扱われることが多い。
人や犬は体内で生成できる
人の体内では肝臓でシステインからタウリンを合成することが出来る。
しかし、猫は体内で作ることが出来ないので、フードなどで外部から摂取する必要がある。
総合栄養食のフードには必ず入っている
タウリンはAAFCO(アーフコ)の定めている基準に最低基準があるため、総合栄養食のキャットフードには含まれている。
タウリン欠乏は危険な状態を引き起こす
タウリン欠乏は、目の病気、心臓の病気などを引き起こし、危険な状態へなってしまう。
そのため必ず摂取する必要がある。
自作フードやドッグフードは要注意
猫に自作フードやドッグフードを与えている場合は注意が必要。
そういったフードにはタウリンが含まれていない場合があるので、意識的に取る必要がある。
タウリンを含む食物
イカ、エビや貝などの魚介類に多く含まれている。
また、タウリンは水溶性のため汁物との相性がよく、効率よく摂取できる。
カルボキシル基を持たないため厳密な意味ではアミノ酸ではないが、便宜上必須アミノ酸に分類される。消化作用を助けるほか、神経伝達物質としても作用する